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PROJECT 7
飛翔体によるX線観測
■宇宙からのX線を捉える■

気球、ロケット、科学衛星などで大気圏外(あるいは大気圏上層部)に達すると、宇宙からの電磁波のうち大気に遮られて地上には届かなかった、赤外線、紫外線、X線、ガンマ線などを捉えることができ、地上の可視光や電波の望遠鏡で見るのとは違った、宇宙の新しい姿を見ることが可能になります。なかでもX線やガンマ線を用いると、太陽コロナや星のフレア、爆発的な核融合をする白色わい星、高速で膨張する超新星残骸、高速回転するパルサー、ガスを吸い込む中性子星やブラックホール、近傍銀河に見られる謎の超大高度X線天体 (ULX) 、多数の銀河の中心にある活動銀河核(巨大ブラックホール)、銀河団の暗黒物質により閉じ込められた高温(数千万度~1億度)のコロナ、宇宙の果てで起きるガンマ線バーストなどを捉えることができます。

私たちはJAXA、理化学研究所、広島大学などと協力し、硬X線検出器と呼ばれる観測装置を開発し、これをJAXA のX線衛星「すざく」(図1)に乗せて2005年に打ち上げ、宇宙からのX線を研究しています。銀河系内の天体観測では私たちは、白色わい星の質量の精密決定に成功し、超新星残骸の高温ガスを詳しく分析し、ガスがブラックホール吸い込まれる直前に、10億度の高温にまで加熱される様子を解明し、さまざまな中性子星の磁場強度を推定して来ました。とくにマグネターと呼ばれる超強磁場の中性子星からは、謎に満ちた硬X線を検出しています。さらに銀河系外の天体については、可視光の観測とも連携して、活動銀河核(巨大ブラックホール)に吸い込まれる物質の挙動を従来にない精度で解明し、銀河団プラズマ中を銀河が宇宙年齢かけて落下してきた証拠を明らかにするなど、多くの成果を挙げています。

「すざく」の後継機として全世界の注目を集めるASTRO-H 衛星 (図2) は、2015年の打上げに向け、広範な国際協力の下で開発が進んでいます。 私たちはそこに搭載される装置のうち、軟X線イメジャー、硬X線イメジャー、軟ガンマ線検出器という三種類の開発を、JAXAや国内外の多数の研究機関と協力して進めています。詳細は、http://astro-h.isas.jaxa.jpをご覧ください。

飛翔体を用いた宇宙観測 図1
図1::M5ロケットによるX線衛星「すざく」の打ち上げ。2005年7月10日、 鹿児島県にある、JAXA内之浦宇宙空間観測所より。
飛翔体を用いた宇宙観測 図2
図2::開発中の次期宇宙X線衛星 ASTRO-H (画像提供JAXA)。