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PROJECT 6
宇宙素粒子物理学

太陽アクシオンおよびhidden photon探索実験

東京大学本郷キャンパス理学部一号館に設置された、東京アクシオンヘリオスコープ、愛称Sumicoと名づけられた実験装置により、太陽内部で発生していると考えられる未発見の素粒子「アクシオン」を探索する実験を行なっています。アクシオンは強い相互作用のCP対称性を保証するために導入された理論によって存在が予言されていますが、未発見です。Sumicoは、太陽追尾をする専用の装置としては、世界で最初に作られたアクシオンヘリオスコープです。

Sumicoにはもう一つ、大きな真空槽と光子検出器からなる太陽hidden photon探索装置を搭載して測定ができるようになっています。Hidden photonは超弦理論に基づく素粒子の標準模型の拡張理論で存在が予言されている粒子で、やはり太陽の中や宇宙空間で普通の光からニュートリノ振動のように振動して作られると考えられています。そのように太陽の方向から飛来してきたhidden photonが実験室の真空槽の中で再び光に転換された後に検出することになります。

Project6・暗黒物質・太陽アクシオン直接検出 図1
東京アクシオンヘリオスコープ

可搬型反電子ニュートリノ検出器による実験

原子炉の近傍に置いて原子炉の運転中の出力や核燃料中に生成されたプルトニウムの量をモニターする目的で、可搬型の反電子ニュートリノ検出器を開発しました。国際原子力機関(IAEA)の核不拡散のための保障措置活動への応用が考えられています。この検出器は複数のプラスチックシンチレータモジュールに分割して構成されており、PANDA(Plastic Anti-Neutrino Detector Array)という名前です。

すでに、小型の試作器を福井県の関西電力大飯発電所の原子炉建屋のすぐ外側に置いて、ニュートリノ測定をしました。検出器はトラックに載せられたまま現地に輸送し、そのまま原子炉の横に駐車して約2か月間測定し、丁度中間時点で原子炉が運転停止した時のニュートリノの検出率の変化を検知しました。宇宙線バックグラウンドの影響の強い地上での原子炉ニュートリノの検出は、これが世界最初です。

宇宙の観測データや、過去の原子炉ニュートリノ実験、太陽ニュートリノ実験、LSNDおよびMiniBooNEといった加速器ニュートリノ実験などの理論との不整合などから、まだ知られていない不活性ニュートリノ(弱い相互作用をしないニュートリノ)が存在するのではないかと考えられています。PANDA検出器は小型のうえに可搬型であるので、短距離で振動する不活性ニュートリノの探索に使用することができます。

Project6・暗黒物質・太陽アクシオン直接検出 図2
PANDA-大飯発電所の原子炉そばでの測定写真
Project6・暗黒物質・太陽アクシオン直接検出 図3
PANDA-トラックに積載した写真

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