サブミリ波は電波と赤外線の中間にあたり、他の波長では捉えることが難しい星・惑星系形成や初期銀河を詳しく見ることができる。このプロジェクトでは、南米チリにあるASTE 10 mサブミリ波望遠鏡(国立天文台・東京大学ほか）をはじめ、内外の電波望遠鏡を駆使し、宇宙の構造形成の基本となる２つの過程、星・惑星系形成、および、銀河形成と進化について研究を行っている。また、これらの観測を推進するため、サブミリ波帯カメラやテラヘルツ帯ヘテロダイン受信機の開発研究を進めている。また、チリに建設された国際大型ミリ波サブミリ波干渉計ALMA(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)による観測を推進している。
(サブプロジェクト１) 星形成から惑星系形成に至る物質進化の探究
サブミリ波帯を中心にミリ波帯からテラヘルツ帯までの多波長スペクトル線観測によって、星形成・惑星系形成を研究している。1998年から2005年までは富士山頂サブミリ波望遠鏡を運用し、中性炭素原子スペクトル線の広域観測によって星形成の母体となる分子雲の形成・進化を調べてきた。現在は、それを発展させ、星間物質が星形成・惑星系形成領域にどのようにもたらされるかを、ミリ波からテラヘルツ帯までの分子スペクトル線観測を通して解明しつつある。これは、宇宙における「物質史」の全貌を理解しようとする研究であるのみならず、太陽系と地球、そして我々自身の宇宙における存在意義を問うものでもある。その目的に向かって、国立天文台45 m電波望遠鏡、ASTE 10 m電波望遠鏡によるスペクトル線サーベイ観測を展開するとともに、テラヘルツ帯での分子スペクトル線観測実現のための超伝導ホットエレクトロン・ボロメータミクサ素子の開発研究を行っている。また、ALMAを用いて、原始星円盤から原始惑星系円盤に至る物質進化を高感度、高解像度で探究している。
(サブプロジェクト2) 大質量銀河と巨大ブラックホールの形成・進化過程の探求
ミリ波からサブミリ波に至る波長域での、広視野・高感度な連続波掃天観測により、ダストに覆われた爆発的星形成銀河（いわゆるサブミリ波銀河）を探索し、さらに、その赤方偏移分布の推定とエネルギー源の診断を行うことにより、初期宇宙から現在に至る大質量銀河と巨大ブラックホールの形成・進化過程の解明を目指している。これまで、ASTE望遠鏡に波長1100μm帯のカメラAzTECを搭載し、銀河探査を進めてきた。得られた膨大な銀河カタログに基づき、 すばる望遠鏡、赤外線からX線に至る波長の天文観測衛星、そしてALMAなどを駆使した追及観測を進めている。超伝導遷移端センサーを用いた多色カメラTESCAMや広帯域分光システムなどの開発も進めている。さらに、サブプロジェクト１と連携して、ミリ波サブミリ波帯でのスペクトル線観測に基づく、銀河の化学的性質に着目した新しいエネルギー源診断法を提唱している。野辺山45m望遠鏡やASTE、さらにALMAを使った観測により、手法を確立し、近傍から初期宇宙に至る様々な銀河の進化の解明につなげることを目指している。
