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PROJECT 3
光赤外線による観測的宇宙論
Project3・銀河と宇宙構造の進化 図1
ハワイ島マウナケア山頂のすばる望遠鏡。

銀河と宇宙の進化を描き出す

本プロジェクトには 2 つのテーマがあります。第一のテーマは、銀河やその集団である銀河団がどのように誕生し進化したかを明らかにすることです。そのためには、さまざまな時代(距離)にある銀河を観測することが必要です。本プロジェクトではこれまで、過去(遠方)の銀河は主にすばる望遠鏡を用いて研究し、現在(近傍)の銀河はスローン・ディジタル・スカイサーベイのデータベースを用いて研究してきました。我々が国立天文台とともに開発したすばる望遠鏡の主焦点広視野カメラ Suprime-Cam は遠方天体の探査に極めて有効であり、本プロジェクトの強力な研究手段になっています。

第二のテーマは、超新星爆発や活動銀河核など、天体の活動現象の研究です。これらの天体は大変明るいため、きわめて遠方の宇宙で発生しても観測でき、宇宙膨張の研究に使えます。これらの天体の性質(真の明るさなど)を近傍の宇宙で明らかにしておけば、遠方の天体の距離が分かり、それに赤方偏移(波長の伸び)を組合わせることで当時の宇宙の膨張速度が得られるのです。例えば 2011 年ノーベル物理学賞が与えられた宇宙の加速膨張の発見では、Ia 型と呼ばれる超新星の距離測定がキーになりました。本プロジェクトでは、主に光赤外線観測から超新星や活動銀河核の物理的理解を深め、宇宙の膨張速度をより高精度に測定していきます。

すばる望遠鏡は、2014 年から Suprime-Cam の 7 倍の視野を持つ Hyper Suprime-Cam が運用に入ります。また、約 2000 個の天体のスペクトルが一度に取れる多天体分光器の導入も計画されています。本プロジェクトはこれらの新装置を主力装置とする予定です。加えて我々は、1m 級望遠鏡に特長のある観測装置を取り付けて、超新星や活動銀河核のユニークな研究を進めようとしています。さらに、これまで本プロジェクトは主に可視光と赤外線を用いていましたが、他の波長との連携も視野に入れています。

Project3・銀河と宇宙構造の進化 図2
すばる望遠鏡のSuprime-Camで撮影した銀河団RXJ0153(約70億年昔の姿)