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PROJECT 1
初期宇宙進化論
Project1・初期宇宙進化論 図1

宇宙がどのように生まれ、どう進化してきたのか、このような根源的な問いに答えるべく、最新の理論と観測を用いて研究を進めるのがこのプロジェクトです。

この十数年の間に観測が飛躍的に進み、宇宙に関するさまざまな事実が明らかになってきました。とりわけ最も顕著な成果は、宇宙マイクロ波背景放射や大規模銀河サーベイによる宇宙大規模構造の観測などをもとに、「宇宙の標準モデル」が確立した点です。宇宙の標準モデルは、宇宙の構成要素から、宇宙膨張のダイナミクス、さらに宇宙の構造形成に至まで多くの観測事実を明解に説明します。しかるに、標準モデルの確立により、あらたな問題点も明らかになっています。中でも、宇宙の全エネルギー密度のほぼ7割を占め、現在の宇宙を加速膨張させている原因とされる 「暗黒エネルギー」の存在は、宇宙論のみならず、素粒子物理学にとっても大きな謎です。基礎物理学の問題としても多大なインパクトを与えています。

  このような謎を解明し、宇宙の成り立ちを明らかにしていくには、最新の物理理論をもとに、宇宙の創生から現在の宇宙までを統一的に説明するトップダウン的な研究と、最新の観測データにもとづき、宇宙の成り立ちと進化を詳細に調べるボトムアップ的な研究が不可欠です。本プロジェクトでは、一般相対論・ 素粒子物理に基づき、現在の宇宙の構造を作るきっかけにもなった、宇宙初期に起こったインフレーション(急激な宇宙膨張)に対する理論的研究を進めるとともに、インフレーションの痕跡を観測的に探る研究をおこなっています。さらに、初期天体形成から大規模構造形成に至まで、精密な数値シミュレーションに基づき解析することによって、宇宙の進化を明らかにしようとしています。こうした研究の一環として、すばる望遠鏡を用いた広視野測光・分光サーベイから暗黒エネルギーの正体を探る観測プロジェクトに積極的に関わっています。また、大型低温重力波望遠鏡KAGRAの建設を踏まえ、宇宙を観測する新しい手法である重力波天文学の創生を見据えて、その基礎となる重力波データ解析の研究に乗り出しています。