今般、科学研究費補助金(基盤研究S)「多波長ラインサーベイによる星形成から惑星系形成に至る化学進化の解明」が採択され、星・惑星系形成領域でのミリ波、サブミリ波、テラヘルツ波におけるラインサーベイプロジェクトが本年度(平成21年度)から5年間にわたって行われることになりました。この研究では、様々な進化段階にある低質量原始星に対して、ミリ波、サブミリ波、テラヘルツ波における観測を展開します。 ミリ波帯においては、これまであまり手がつけられていない 70 GHz帯の SIS受信機を製作し、国立天文台 45 m電波望遠鏡に搭載します。これにより重水素化物、複雑な有機分子のスペクトル線を捉えます。サブミリ波帯では国立天文台ASTE 10 m望遠鏡による観測を展開し、有機分子、炭素鎖分子の高励起輝線の検出を行います。原始星円盤、原始惑星系円盤の高温高密度領域での化学組成を明らかにします。テラヘルツ帯ではホットエレクトロンぼろメータ(HEB)ミクサ受信機を製作し、国立天文台ASTE 10 m望遠鏡に搭載することを計画しています。これを用いて0.9 - 1.5 THzにあるCH, CH2, NH, H2D+ などの基本分子の観測を試みます。これらの検出は化学進化の根幹を捉えるものとして非常に重要な意義があります。 本研究はこれまで山本研究室で行なってきた星間分子雲の化学進化の観測的研究と、テラヘルツ帯HEBミクサ受信機の開発研究を発展的に融合させるものです。5年間で星形成から惑星系形成に至る化学進化の大筋を明らかにし、ALMAにつなげて行きたいと考えています。 本研究は、国立天文台の高野秀路氏、廣田朋也氏、東京大学理学系研究科天文学教育研究センターの酒井剛氏、および名古屋大学太陽地球環境研究所の前澤裕之氏との共同研究です。
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