観測成果1

炭素原子の銀河系内広域分布

私たちはこの可搬型18cmサブミリ波望遠鏡を用いて、銀河系内域(太陽系よりも内側の領域)における炭素原子の広域分布を、世界で始めて明らかにしました。下の図は、位置-速度図と呼ばれるダイアグラムで、それぞれ炭素原子、一酸化炭素分子の放射するスペクトル輝線の位置-速度分布を表しています。銀河系内域では、炭素原子と一酸化炭素分子の大局的な分布・運動は似かよっており、ともに銀河系の回転に沿う運動をしていることが分かりました。

銀河系内域における炭素原子(上)と一酸化炭素分子(下)の位置-速度分布の比較。一酸化炭素分子の分布は T.M. Dame博士(Harvard-Smithsonian CfA)らによる。

 

原子/分子比の銀河半径依存性の発見

上記の位置-速度データを詳細に解析すると、それぞれのガス相が銀河半径(銀河系中心からの距離)に対してどのような分布をしているのか調べる事ができます(下図左)。この図から、星間空間での炭素の主要な二形態である炭素原子と一酸化炭素分子の放射強度比が、銀河半径に依存して変化している事が推測されます。そして、モデル計算の結果を参照して放射強度を物理量に変換すると、炭素原子/一酸化炭素分子存在比が銀河半径に対して単調に増加していく傾向が見出されます(下図右)。これは言い換えれば、星間空間のガスは銀河中心に近いほど分子の形態をとる割合が高いことを示しています。

(左)太線は炭素原子、細線は一酸化炭素分子放射強度の銀河半径依存性。下はそれらの比。(右)赤い点は炭素原子/一酸化炭素分子存在比の銀河半径依存性。青い点は一定体積に含まれる一酸化炭素分子の量。