重水素濃縮で探る大質量星形成
星間分子雲中の分子には、重水素原子が多く含ま
れることが知られており、重水素濃縮と呼ばれる。本
研究では、大質量星形成領域における重水素濃縮度
を系統的に調べる目的で、野辺山 45 m 望遠鏡により
DNC (J = 1-0) および HN13C (J = 1-0) のサー
ベイ観測を行った。廣田らによって行われた低質量
星形成コアにおける結果と比較したところ、低質量
星形成コアでは DNC/HNC の柱密度比が 0.05 程度
またはそれ以上であるのに対し、大質量星形成コア
では 0.01 以下のものが多く存在した(図)。
低質量星形成領域では,母体となるコアの温度が
低く、Depletion も進んでいるため、重水素濃縮度が
高くなる。重水素を含む分子(特に中性分子)は星
形成後も105 yr 程度は壊されずに残るので、現在は
すでに星が生まれているコアであっても重水素濃縮
度に関しては星形成が起こる前の情報を保持してい
る可能性が高い。したがって、大質量星形成領域で
重水素濃縮度が低い傾向にあることは、母体となる
コアの温度が高く、重水素濃縮が進まなかったため
と考えられる。今回の結果は、重水素濃縮度を指標
として星形成コアの過去の物理状態を知ることがで
きる可能性を示している。なお、HDCS/H2CS に関
しても観測を行ったところ、同様の結果が得られた。
図: Plot of the HN13C and DNC column densities for
various star forming regions. For massive star forming regions
(diamond marks), DNC tends to be deficient in comparison
with HNC. |
星形成過程の観測研究
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