可搬型18cmサブミリ波望遠鏡は、文字通り持ち運び可能な、世界で唯一の小口径サブミリ波望遠鏡です。宇宙から来るサブミリ波は地球大気中の水蒸気に吸収されるため、観測地は標高が高く乾燥した場所である必要があります。この可搬型望遠鏡ならば、世界中至る所に持ち込んで観測を行うことができます。また小口径であるため、天球上の広い領域を効率的に走査できるという利点もあります。私たちはこの可搬型18cmサブミリ波望遠鏡の利点を生かして、銀河系内の星間ガス諸相の大局的分布・運動を明らかにし、それらと渦状腕などの銀河系構造との関係を調べることによって、銀河系全体のガス相のダイナミズムを理解しようとしています。

 

望遠鏡システム

●光学系
望遠鏡の光学系には、副鏡による遮蔽をなくして損失を最小限に抑えるために、オフセット・パラボロイド光学系を採用しています。主鏡口径は18cm、焦点距離は420mmです。

●超伝導受信機
現在は、炭素原子が放射する波長610ミクロン(492GHz)のスペクトル線を観測するための受信機が搭載されています。小型軽量で省電力型の冷凍機(Sumitomo RDK-101)を採用しています。受信機雑音温度は140Kを達成しています。

超伝導受信機「岡1号」

●音響光学型分光計 (AOS)
銀河系回転(〜220 km/s)でドップラー偏移した周波数成分を一度にカバーすることが可能な広帯域分光計を開発しました。周波数帯域は約900MHzで、チャンネル数は1728ch、周波数分解能は約2MHzです。

●データ積分器
On-the-flyマッピング観測法に対応可能な高速積分器を開発しました。4ms/frame の連続積分動作が可能です。

音響光学型分光計「池田1号」(右下)と、データ積分器「亀谷1号」(右上)、IF増幅器系「松尾1号」(左中)

●制御系
望遠鏡システムの制御には汎用のWindows 2000マシンを使用し、GP-IBインターフェースを介して行っています。制御ソフトウェアは全てVisual C++で記述されています。

望遠鏡制御計算機と、亀谷1号(左中)、松尾1号(左下)