サブミリ波望遠鏡の開発

炭素は水素・ヘリウム・酸素に次いで存在量の多い元素で、 イオン化ポテンシャルが低いことから分子雲中の電離度 や冷却率を決める主要な要因である。 星間分子雲が重力収縮して恒星になる過程で、 炭素の存在形態は、炭素イオン・中性炭素原子・一酸化炭素分子の順に 変化する。 従って、これらの3つの分布を比較することにより、 分子雲の構造・熱収支・化学状態について理解が深まる。 このうち、一酸化炭素と炭素イオンについては、 銀河面や近傍分子雲における分布が活発に調べられているが、 中性炭素原子の分布は詳しく調べられていない。 COBE衛星による7度ビームでの観測から、 中性炭素原子が銀河面に広く分布していることが確かめられているに過ぎない。 我々は、中性炭素原子の微細構造線(#tex2html_wrap_inline258#: 492 GHz) による近傍分子雲と銀河面での広域分布の観測を計画している。 サブミリ波領域の電波は大気中の水蒸気による強い吸収を受けるため、地上か ら観測可能な場所は標高が高く・気温が低く・乾燥した場所に限られている。 このような場所では観測時間も短いため、 中性炭素原子の観測には専用の望遠鏡が必要である。 サブミリ波の受信技術は難しく、高感度受信機の開発は重要な課題である。 このような観点で次のような課題に取り組んでいる。