どんな成果がでているの?

星間分子雲が形成される様子がはじめて見えました

おうし座分子雲は、星が生まれつつある雲の中で、距離が最も近いものです。私たちはこの望遠鏡を用いて、おうし座分子雲での炭素原子の分布を世界ではじめて明らかにしました。図の赤い所が炭素原子の多い所で、黄色、緑、青の順に少なくなっています。図には、国立天文台野辺山観測所の45m電波望遠鏡で観測された一酸化炭素分子の分布を等高線で示してあります。一酸化炭素分子が多い(等高線がたくさんある)所には炭素原子は少なく、逆に炭素原子が多い所には一酸化炭素分子はあまりありません。炭素原子は時間をかけてゆっくりと一酸化炭素分子に変わっていくので、「できてしまった分子雲」はおもに一酸化炭素分子で見え、「今まさに分子雲が形成されている所」が炭素原子で見えています。この領域では分子雲が北(上)から南(下)に向かって形成していることがわかりました。

おうし座分子雲における炭素原子(カラー)と一酸化炭素分子(等高線)の
分布の比較。一酸化炭素分子の分布は国立天文台・砂田和良氏らによる。

巨大分子雲における炭素原子の分布を解明しました

オリオン巨大分子雲は、オリオン大星雲M42の背後に横たわる巨大な分子雲です。質量は太陽質量の10万倍以上もあります。富士山頂サブミリ波望遠鏡による観測で、これまで他の望遠鏡で行われた観測の10倍以上の領域を観測することができ、巨大分子雲全体における炭素原子の分布の全貌がはじめて明らかになりました。左の図で、赤い所が炭素原子の多い所で、黄色、緑、青の順に少なくなっています。炭素原子は巨大分子雲の「背骨」に沿って細長く分布していることがわかりました。右の図は富士山頂サブミリ波望遠鏡で観測した一酸化炭素分子のサブミリ波スペクトル線の強度分布を示したものです。これらの結果は、巨大分子雲がどのような構造をもっているのか、また、どのようにして作られてきたのかを解き明かす上で、大きな手がかりになっています。

オリオン巨大分子雲における炭素原子(左)と一酸化炭素分子(右)の分布